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本館リニューアル情報

Main Building Renewal Information

ユーフラテス インタビュー「新美術館みんなのアートプロジェクト」委託制作への取り組み

2020年10月07日に情報が更新されました。

単色で構成されたシンプルな画面上を「一本の線」が自由に動きまわり、ストーリーを展開するアニメーション作品《一本の線》を制作中のうえ田みおさん(左)と山本晃士ロバートさん(右)。

単色で構成されたシンプルな画面上を「一本の線」が自由に動きまわり、ストーリーを展開するアニメーション作品《一本の線》を制作中のうえ田みおさん(左)と山本晃士ロバートさん(右)。

2021年春にリニューアルオープンを予定している信濃美術館。同館には、来館者が気軽にアートに触れられる場所として約26メートルのL字形壁面に映像作品の投影が可能となるスペース「こみゅラボ」が新設されます。
長野県と長野県信濃美術館は、現在、「こみゅラボ」で上映する映像作品を2組の映像作家に委託する「新美術館みんなでアートプロジェクト」を進めています。 ここでは同プロジェクトのために新作を制作しているユーフラテスへのインタビューをご紹介します。(松井正・長野県信濃美術館 学芸員)

 

同作の鍵となる「線」は次のルールに従ってスクリーンの上を動いていく。

 

▽線の長さは、一定に保たれる。
▽あらかじめ決められた絵を「なぞるように」進む。

 

同作は、動物や植物、建物などさまざまなモチーフをなぞるように動くが、モチーフの全体像を描いた「絵」が完成することはない。「絵」未満のシンプルな「線」の動きだけでストーリーを表現する作品として構想されている。

 

―「新美術館みんなでアートプロジェクト」について、初めどのような印象を受けたか教えてください。

 

【山本】「映像を作ってください」という風に最初聞いていたんですけど、詳しいお話を聞くうちに、どちらかというと映像というよりも建築物の一部を作るようなプロジェクトではないかと思いました。
特殊なL字型のスクリーンに映像を映して、しかも、そこがギャラリーではなくて「こみゅラボ」というチケットを買わなくても入れる場所ということなので、ムービーを作るというよりも市民の方たちが集まる場所の一部を作るイメージなのかなって。ユーフラテスとしてもやったことがない新しい試みなので、面白そうだなと思いました。

―《一本の線》のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか。

 

【うえ田】新しいアニメーション表現を探すということを以前からやっていたのですが、《一本の線》のアイデアもそのような過程で思いつきました。
普段目にするアニメーションは、「この線がこう変わったということは、この絵がこう動いたんだ」という読み取り方をすると思うんですけど、《一本の線》は描かれているものが何かを読み取ったあとに、前の線と今の線を比較する。読み取り方が普通のアニメーションと違いますよね。
新しいストーリーの読み取り方というか。そういうことをやってみたかった。あと、単純に線がのびていくのって面白いですよね。

―ユーフラテスの、もしくはお二人の制作スタイルについて聞かせてください。

 

【うえ田】いきなり画を描いて、動きも決めて、造形のところを山本に整えてもらおうかと思っています(笑)。

―造形を整えるというと?

 

【うえ田】モチーフの形とか……あまり子どもっぽくなり過ぎない方がいいと思うので、その調整を山本にやってもらおうと思っています。

―普段もそのように役割を分担しているのでしょうか。

 

【うえ田】もちろんユーフラテスにはチームでやる人たちもいるのですが、わたしはあまり相談しないでどんどん作るタイプです(笑)。
でも、それだけでは失敗してしまうので、みんなの意見を聞きながら制作すると思います。と言っても、作ったものを見てもらうという感じですね。どうしても大人数で作ると平均化されてしまうので。
音楽の製作者とはすごく相談すると思います。

―作品を制作する上での課題などがありましたら聞かせてください。

 

【山本】見終わったときに作品の意味が「分かった!」という気持ちになるものを普段作っているんですけど、「こみゅラボ」での上映を考えると、何度見ても飽きないものにするために、アニメーションとして見ていて気持ちいいとか、面白いとか、不思議な気持ちになるみたいなことを重視した方がいいのではないかと思っています。

 

【うえ田】あとは、ちょうどいいスピード感を見つけられたらいいなと思います。
《一本の線》は、前の画面と今の画面を常に観客が比較していくところが面白いので、作品の展開が早い方が……自分の頭のなかでぎりぎり処理できるくらいの方が面白いと思うんですけど、「こみゅラボ」に来る人たちの気持ちってもうちょっとのんびりしていますよね。
だから、そのくらいのトーンに合うちょうどいいスピード感を見つけられたらいいなと思っています。
「こみゅラボ」は特殊な環境なので、相反する様々な要素の「ちょうどいい具合」を見つけることが課題です。

―最後に、長野を訪れた際の印象を教えてください。

 

【山本】善光寺界隈の雰囲気がとてもよかったです。参道の先に善光寺があるのがずっと見えていて、どこへ行くにも「あの辺りに綺麗なお寺や美術館があるんだな」という感じが心に残るような気がして。そういう感じがよかった。

 

【うえ田】工事中の美術館を見に行ったときに、アニメーションに色をつけるかどうかを決めたいなと思っていたんですけど、実際に街の感じを見て色をつけた方がいいと思いました。「綺麗な街だから綺麗な色でやりたいな」と。暫定ですけど(笑)。
あと冬には、館内から外の雪景色が見えるという話を聞いたので、そういう雰囲気に合わせるためにも絶対に綺麗な色の方がいいなと思ったんですよ。最初は白黒でやろうかと迷っていたんですけど(笑)。

―ありがとうございました。

 

○略歴

 

ユーフラテス[EUPHRATES]

さまざまな研究を基盤として活動しているクリエイティブ・グループ。
慶應義塾大学・佐藤雅彦研究室の卒業生を母体として、2005年12月活動開始。NHK Eテレ《ピタゴラスイッチ》、《大人のピタゴラスイッチ》、《0655》、《2355》等を手がける。

《一本の線》(仮題)の試作

《一本の線》(仮題)の試作

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