【重要なお知らせ】長野県信濃美術館本館は2017年10月1日から改築工事のため休館しております。 詳細はこちら
長野県信濃美術館の東山魁夷館は、約2年半にわたる改修工事を経て、令和元(2019)年10月5日にリニューアル・オープンいたしました。開館30周年を迎える本年は、970点におよぶ東山魁夷コレクションから精選した日本画本作・下絵・習作・スケッチなどを、年6期に分けてご覧いただきます。
長野県信濃美術館・本館の方は、昭和41(1966)年に開館した建物を取り壊して、現在、新しい建物を建設中ですが、昨年12月に躯体部分のコンクリート打ちも終了し、善光寺御開帳の来年(2021年)4月開館をめざして、工事は順調に進んでおります。
新しい本館は、善光寺ご本堂東側の城山公園(噴水広場)に立地します。地下1階・地上2階建て、床面積10,000㎡の建物を、ちょうど2階分(約10m)の高低差のある傾斜地に水平に挿し込む(作りつける)かたちとなり、桜の名所として知られる西側の高台から建物のルーフトップに上がると、寺塔伽藍の立ちならぶ善光寺境内や美しい里山の景観が一望に見晴らすことができます。周囲の景観に溶け込みながら、(建物の側から見ると)これまでにない歴史的・自然的風光をお楽しみいただける点で、それはまさに新美術館の基本コンセプトのひとつである「ランドスケープ・ミュージアム」を実現するものといえるでしょう。どうぞご期待ください。
昨年と同じように今年度も、休館中も実施することのできるさまざまな事業――県内各地での所蔵作品の「移動展」「交流名品展」や、館外施設で行われる学習プログラムをはじめとして――を継続実施しながら、開館後の企画展・所蔵品展・学習プログラム・交流事業やアート・ライブラリー開設の準備などを進めていきます。
県立美術館の使命は、もちろん長野県生まれの美術家の作品を中心に、明治・大正・昭和から今日にいたる近現代美術を、できるだけバランスよくご覧いただくことにありますが、ここで想い起こしていただきたいのは、100年前に描かれた歴史的名作であっても、制作当時はみな「現代美術」であったことです。美術作品は、どの時代にあっても(少なくとも近代美術の場合は)、ひとりの画家なり彫刻家がみずからの時代状況に果敢に立ち向かうことから生まれた果実であり、それらの声は、異なる時代に生きるわたしたちが聞き届けることによって現代に再生するのです。もちろんそれらを味わうためには、作家の生涯や時代背景に関する美術史的知見が大いに助けになるでしょう。そこに、学芸員や研究者の出番があります。
開館に向けた準備はまだまだ途上ですが、鑑賞-学習-交流のはたらきが一体となった新時代の県立美術館の建設をめざして、職員一同力を尽くしてまいりますので、皆様には変わらぬご支援、ご声援を宜しくお願い申し上げます。
令和2年4月記