

私の森――それは私の地図の中にある。
時には北方であったり、南・・・それは余り無いが、同じところを季節を変えて何度も行ってみる。私は若い時から山歩きが好きで、スケッチブックを片手に、どこまでも時には外つ国までも出かけた。
しかし、だんだんと年をとると山と言っても登るのではなく、高原をさ迷ったり深い森に分け入って、秋になると足が埋まるほどに散り敷かれた落葉を踏みしめながら歩くのが好きだ。(中略)
森が私を呼んでいる―そんな想いにかられて、さまざまなドラマを秘めた森を探し求め、足の赴くまま、気の向くままに、これからも生命のある限り出かけることだろう。
東山魁夷「私の森」(『森への誘い』1997年 日本経済新聞社)